雇用保険における所定給付日数と受給期間と給付制限を調べてみた
この記事は、 以前の記事 で挙げた所定給付日数と受給期間と給付制限について説明します。 なお特に断りのない限り、情報源は 雇用保険に関する業務取扱要領(令和4年10月1日以降) です。
免責事項
この記事は私自身が調べた知識や経験に基づいた情報提供のためのものであり、不正行為の促進や不正受給の援助を目的としたものではありません。また正確性や適切性を保証するものではありません。そのため、各情報提供元の説明を自分で確認し、自己責任で判断してください。
なおこの記事を利用して直接的または間接的に生じた問題や損害について、私は一切の責任を負いません。さらに、私は無資格者のため、この記事は専門家の助言に代わるものではありません。
所定給付日数
基本手当の支給を受けることができる最大の日数です。 特定受給資格者(再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた方)や特定理由離職者のうち雇止め 1 の場合、一般の離職者と比べ手厚い所定給付日数になります。
受給期間
基本手当の支給を受けることができる期間で、原則として退職日の翌日から1年間です。
妊娠、出産、育児などの理由により引き続き30日以上職業に就くことができない日がある場合は受給期間の延長が認められます。 なお公共職業訓練(以下「職業訓練」という)を受講する場合の訓練延長給付もあります。
給付制限
雇用保険制度による失業者の所得保障が正当な受給権を持つ者に対してのみ行なわれるべきという趣旨があります。
例外として非自発的離職者(正当な理由がある退職者など)は給付制限が なし になります 2 。 また求職紹介や職業訓練などを正当な理由なく拒否した場合にも給付制限があります。
訓練延長給付
公共職業安定所(以下「ハローワーク」という)所長の指示により職業訓練を受ける受給資格者に対して、所定給付日数分の基本手当の支給終了後もなお職業訓練を受講するために待期している期間(90日間 3)、受講している期間および受講終了後の一定期間(30日間 4)基本手当を支給することで受給資格者の職業訓練の受講を容易にし、その習得した技能によって再就職の促進を図ろうとするものです。
表. 訓練延長給付の概要
支給日額 | 振り込み予定日 | 失業の認定方法 |
---|---|---|
基本手当と同額 + 技能習得手当と寄宿手当 | ハローワークに前月分の公共職業訓練等受講証明書が(おおよそ月の上旬に)届いてから通常5営業日 | ハローワーク所長の受講指示があった場合は、訓練実施機関の長が代理で 公共職業訓練等受講証明書 を提出します(原則、ハローワークへ出向く必要がなくなります) |
受講指示について
職業訓練を受講することが再就職のために必要な人かどうかなど、いくつかの要件があります。 支給残日数の要件を満たさないなどの理由から受講指示されない場合は受講推薦となり、訓練延長給付および技能習得手当(受講手当と通所手当)や寄宿手当が給付されません。
なお職業訓練の申し込み 5 は次のような流れになるようです(ハローワークによっては異なる場合があります)。
- ハローワークで訓練相談し、職業訓練生募集案内を入手・申込します
- 訓練実施機関で職業訓練の説明会を受けます
- ハローワークで訓練相談し、職業訓練受講の必要性があるかを判断します
- 興味本位や訓練延長給付目的でないことの確認やキャリアコンサルティングを経て受講申込書や入校願書が交付されます
- 必要に応じてジョブカードの交付を受ける必要があります
- ハローワークで受講申込書や入校願書を提出します
- 訓練実施機関で選考(面接や筆記試験など)を受けます
- 合格発表
- ハローワークで受講指示、受講推薦の判断がされ、受講指示日が通知されます
- 受講指示日(入校式の前日など)にハローワークにで必要書類を提出します
- 訓練実施機関で入校式に出席し、公共職業訓練等受講届・通所届 を入手します
- ハローワークで公共職業訓練等受講届・通所届を提出します
- 受給資格者証に必要な改定(受講指示のしるしや新しい基本手当の支給日の通知)がされます
- 職業訓練開始
支給残日数
受給期間満了内における所定給付日数から基本手当や傷病手当の給付があった日を引いた日数です。
例外として失業認定申告書で就労した日など、失業認定されなかった日は引かれません(求職活動をしていないなど、不認定された場合も含みます)。
基本手当
受給資格者が基本手当の支給を受けるには、ハローワークに出向き、求職の申し込みと受給資格の決定を受けた後、失業の認定を受ける必要があります。
表. 基本手当の概要
支給日額 | 振り込み予定日 | 失業の認定方法 |
---|---|---|
特定の算出によって決定されます 6 7 | 認定日(認定日は受給資格者が退職後最初にハローワークに出向いた日から起算して4週間のうちの特定の曜日を指定したもので、行政機関の休日や年末年始、職員の対応数によって前後する)から通常5営業日 | 失業の認定日に 失業認定申告書 を提出し、認定対象期間(前回の認定日から今回の認定日の前日までの28日間)の求職活動実績が2回以上あることを確認する(初回支給認定日や認定対象期間の日数が14日未満となる場合、求職活動実績は1回以上で十分と判断されます) |
例外として証明書による失業の認定も可能です(上記の失業認定申告書による求職活動実績の確認が不要になります)。主に次のケースがあります。
- 受給資格者が疾病または負傷のためハローワークに出向くことができない場合で、その期間が継続して14日以内のとき(15日未満に治ゆしたもの)
- 医師の診断書などの証明書(初診日や治ゆ日などの要件あり 8)が必要です
- ハローワーク所長の指示・推薦により職業訓練を受講する場合
- 公共職業訓練等受講証明書 が必要です(受講指示の場合は訓練実施機関の長が代理で提出してくれるはずです)
傷病手当
受給資格の決定後(求職の申し込み後)の病気やケガで引き続き15日以上職業に就くことができなくなった場合、基本給付の代わりに生活の安定を図るために支給されるものです。
表. 傷病手当の概要
支給日額 | 振り込み予定日 | 傷病の認定方法 |
---|---|---|
基本手当と同額 | 右の傷病の認定日から通常5営業日 | 病気やケガで職業に就くことができない理由がやんだ後の最初の失業認定日までに、 傷病手当支給申請書 を提出する |
傷病手当の支給申請(15日以上)か受給期間の延長申請(30日以上)を選択する方針となります。
例外として次のケースは傷病手当の支給ができません。
- 訓練延長給付を含む延長給付の基本手当を受給中の場合
- 待期中や給付制限期間中の場合(基本手当の代わりとなるため)
- 受給資格の決定前からの傷病の場合
- 健康保険の傷病手当金などの類似する給付を受ける場合
なお傷病手当の支給を申請をすると、後述の受給期間の延長措置が取り消されます。
受給期間延長申請の手続き
受給資格の決定有無にかかわらず、病気やケガで引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日以降に受給期間延長申請 9 をすると、申請した日数を受給期間に加えることができます(3年間が限度)。 申請は必ずしも本人自身がハローワークに出向く必要はなく、郵送もできます 10 。
まとめ
次の手当や延長の判断方針を整理します。
- 基本手当
- 傷病手当と受給期間延長
- 技能習得手当(受講手当と通所手当)や寄宿手当と訓練延長給付
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出典「ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数」より抜粋
↩特定理由離職者のうち「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方については、受給資格に係る離職の日が2009年3月31日から令和7年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。
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令和2年10月1日以降に正当な理由なく自己の都合により退職した場合の給付制限期間は、2か月となります ↩
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Q16 受給期間延長の手続きには何が必要でしょうか。また、退職後に病気で入院しているため、ハローワークへ行くことができないのですが、申請はハローワークへ行かなければならないのでしょうか。 - 厚生労働省 ↩